アパレルの歴史を検証する
アパレルビジネスにおけるモノつくりから販売までのノウハウの蓄積は、すでに体型とセオリーが完成されようとしている。しかし、アパレルメーカーを中心としたファッション産業は、21世紀にむけての産業構造になりえているか?多くの課題を抱えているのが現状ではないだろうか?他の業界、特にコンピュータのソフトウエア開発企業、ハイテク企業、世界的ネットワークをもつ自動車産業、国際化された銀行、証券業界等々がめざましい企業努力と進歩を遂げているにも関わらず、他業種からは常に注目されてきたノいや、もしかしたら未だ注目され続けているかも知れないアパレル産業が、である。今日のような大きな時代のうねりの中で、かつてあれだけ栄光を放ったアパレル産業が様々な問題をかかえ、苦慮し、他業種にも2歩も3歩も遅れをとってしまっているのはなぜだろうか?今後果たしてかつてのような黄金時代が再来するのか?または未来的に変貌し、全く新しい形態のアパレルが生まれ、国家的産業にまでなり得るのか?そこで、過去から今日までのアパレルの歴史を振り返りながら検証することで、今後のニューアパレル像を浮かび上がらせてみたいと思う。まずは、日本のアパレル産業の歴史を考えてみる。


 戦前戦後の紡績を中心とする繊維主導型物流産業として始まったこの産業は、現在のプロトタイプとなる70年代初頭のVAN、JUNなどのメンズファッションを中心としたファッションビジネスの台頭により、その形態が確立された。それから今日までのわずか20年足らずの道程であり、以外と歴史の浅いことが理解できる。その後、長い繊維産業的体質から徐々に脱皮し、80年代のDCブームを迎え知識集約型情報産業として進歩をとげ、様々な戦略的ノウハウの蓄積もされた感がある。そして、今日叫ばれている生活提案型文化産業、つまり個人のライフスタイルの中にファッションをトータルに提案する産業として模索をしているのが現状であろう。ここで、過去を振り返っての反省、問題や課題の分析と、それらの解決への道、新たなる可能性の挑戦と、準を追って追求していきたい。そもそもファッションビジネスは常にファッションやトレンドというソフトの側面(感性、時代性、デザイン)と、方や流通(マーケティング、プロダクト)というハードな側面が複雑に関わり合って試行錯誤の歴史をたどってきた。そうして独自のノウハウを蓄積してきたことは事実である。
 

 しかし、他業種(特に化粧品、自動車、家電、インテリア、飲食などの付加価値産業)に見られるような成功のケーススタディーを積極的に取り入れてきたかというとここは大きな疑問が残るのである。なぜ、立ち後れたのか?どんな問題点や課題を抱えているのか?やはり、数々の問題点が未解決のまま進んできたのがそれらの原因ではないだろうか?まず大きな問題点としてランダムにあげると、長期戦略構想、科学的経営ノウハウの未構築、国際化における競争力、国際商品開発力の弱さ、人材投資、人材教育、育成のノウハウの欠如、不十分な福利厚生、業務システム化、情報収集力、データ分析システム不備等々があげられる。独自な美智を歩んできたアパレル産業には、このような数多くの未解決の部分が課題としてのこっており、今後の展開を考える上で、異業種との交流やコンファレンス、研究システム、人的交流などを通じて追求していく課題は多いだろう。従来のソフト面にかたよった経営、または逆にハード面に偏った経営など反省すべき店は多々あり、世の中の情報化がものすごいスピードで進む中、日本の各産業、各企業は必死の努力により、それらを克服してきた。第一次、第二次オイルショック、円高経済などにより、我々の企業環境は大きく変わってきたのである。その間アパレル産業は、内需中心の経営で国内消費の伸び率とともに100%に近いマーケットシェアを供給過多の構造を持ちながらもDCブランドブームなどで何とかやり通してきた感すらある。しかし、87年頃からの空前のインポートブームは、これまでのマーケットバランスを大きく変えてしまったのである。